大腸ポリープとは
腫瘍性と非腫瘍性のポリープに大きく分けられ、大腸ポリープで最も多く発見されるのは、腫瘍性の腺腫です。腺腫は良性腫瘍ですが進行すると一部ががん化して大腸がんになります。非腫瘍性のポリープは、過形成性ポリープ・過誤腫性・炎症性があり、こちらもまれにがん化することがあるため、切除の対象になります。
大腸ポリープは大腸カメラ検査で発見した際に、その場で内視鏡的に切除でき、これは将来の大腸がん予防になります。
症状
ポリープには痛みなどの自覚症状がほとんどなく、硬い便が擦れる場所にできて大きくなった場合には便の通過で傷付いて出血し、便潜血検査で陽性となります。サイズが小さいポリープや、隆起しないポリープは発見できませんし、小腸よりのやわらかい便が通過する場所にできたものはサイズが大きくなっても便の通過で傷付かないため、やはり便潜血検査では発見することができません。
サイズや形状にかかわらず、ポリープを確実に発見できるのは、粘膜を直接観察できる大腸カメラ検査だけですし、発見したポリープはその場で切除できるため、治療もそこで終了します。
早期発見・早期治療で生活の質(QOL)を守ります
大腸がんは早期の段階やポリープで発見し、切除してしまえば根治できる病気です。そのまま放置するとがん化する可能性があるポリープは、40歳以上の日本人の約半数が持っているとされており、40歳を超えると大腸がんリスクは上昇しはじめます。
進行した大腸がんは、長期にわたる治療や手術が必要になりお仕事や生活に支障をおよぼします。ご自分とご家族の生活の質(QOL)を守るためにも、当院では40歳を超えたら定期的な大腸がん検査を受けるようおすすめしています。
大腸ポリープの切除
大腸カメラ検査を行った際に大腸ポリープを発見したら、その場で切除が可能です。これは、日帰り大腸ポリープ切除手術と呼ばれており、切除後は入院の必要がなく、そのままご帰宅いただけます。切除の際に痛みはほとんどなく、検査中に5~10分程度で切除可能です。
検査と切除を別日に行う必要がないため、スケジュール的にもご負担が減りますし、事前の下剤服用といった準備も1回だけですみます。ただし、数が多い場合には一度で取り切れないため別の日に切除を行う必要がありますし、サイズが大きい場合などでは切除に入院が必要になるケースもあります。入院が必要な場合には、スムーズに切除できるよう近隣の提携病院をご紹介しています。
切除方法
大腸カメラ検査で切除が可能なのは、5~10ミリ程度の小さなポリープで、数は5個程度が上限です。切除にはいくつか手法があり、形状などに合わせて行います。なお、切除したポリープは回収して病理検査を行い、確定診断に役立てます。
ポリペクトミー
内視鏡の先からワイヤーのような細いスネアを出してポリープにかけ、締め付けてから高周波を流して焼き切ります。電気メスと同様、通電によりすみやかな止血が可能です。ただし、術後の炎症・出血・穿孔などの合併症リスクがあるため、安全に行える症例にしか使用していません。
コールドポリペクトミー
高周波の通電を行わず、スネアで締め付けて切除します。深部にダメージを与えずに切除できるため、術後の炎症・出血・穿孔などの合併症リスクがほとんどありません。切除直後の出血はありますが、自然に止血します。安全性が高いため、当院では主にこの手法を用いています。
内視鏡的粘膜切除術
平坦なポリープの場合、そのままではスネアをかけられないため、この手法を用います。粘膜のすぐ下にある粘膜下層に生理食塩水を注入することでポリープを持ち上げてからスネアをかけて切除します。この手法により粘膜より下にダメージを与えることなく、安全に平坦なポリープの切除が可能です。
留置スネア
ポリープと粘膜の間が茎でつながっているケースがありますが、茎には太い血管が通っているためそのまま切除してしまうと大出血を起こす可能性があります。そうした際に、茎をあらかじめ留置スネアで締め付けておくことで、安全な切除が可能になります。
切除後の注意点
検査と同時に行えますが、ポリープ切除は手術です。日帰りで受けた際には、ご帰宅したら安静に過ごし、いくつかの制限を数日間守っていただく必要があります。またそれ以外にも下記のような制限がありますので、検査日を決める際にはこうしたことも考慮してスケジュールを決めてください。
- 脱水や低血糖の予防
- 大腸カメラ検査は腸を空っぽにしてから受けないと正確な結果を得ることができないため、事前の食事制限や下剤の服用が必要です。このため、脱水症状や低血糖を起こすリスクが高くなります。それを防ぐために、検査後は医師の許可が出たら、すぐに水分を補給し、甘いものなどで糖分を摂取してください。
- 食事
- 切除を受けた当日は、消化の良いものを食べてください。おかゆやうどんなどが適しています。翌日以降の数日間は、唐辛子などの香辛料や油脂分の多いメニューを避けてください。
- アルコール
- 血行が促進して出血リスクを上昇させますので、切除してから1週間はアルコールを控えてください。
- 入浴
- 翌日からシャワーは可能です。数日間は浴槽に浸からないようにしてください。
- 運動
- 軽い散歩は翌日から可能です。
ジョギングやゴルフ、テニス、水泳、はげしい運動、腹圧がかかる運動は、1週間ほど控えます。 - 旅行・出張・長時間の運転
- 切除後、1週間ほど旅行・出張・長時間の運転を控えてください。飛行機は気圧が変化するため出血リスクがあり、特に避ける必要があります。また、遠方では万が一の際に的確な処置を素早く行えない可能性が高いため、ご注意ください。